死後離婚とは?
2017年12月1日
死後離婚とは
1 死後離婚とは?
死後離婚ということばがあります。例えば夫が死亡したあとに妻が夫と同じ墓には入りたくない場合であったり、夫の親族(特に姑)との縁を切りたいなどの事情から夫との婚姻関係を夫の死後の終了させることをいうのだそうです。そもそも死亡した夫と離婚できるのでしょうか。
2 姻族終了の届出
法律上は、配偶者が死亡したあとは、離婚することはできません。夫又は夫の親族との姻族関係を終了させるには、姻族終了の届出を行うことで完了します。なお、姻族とは、婚姻によって親族なる関係をいい、配偶者と配偶者の親族を指します。
具体的な手続は、
①届出人が
②届出人の本籍地又は所在地の市役所等に対し
③配偶者の死亡の事実がわかる除籍謄本等を添付して
④所定の姻族関係終了届を提出します。
3 扶養義務との関係
姻族関係終了届の一番の効力は、姻族、特に姑等の夫の親族に対する扶養義務が法的に消滅することです。
扶養義務について、法律では、まず扶養義務を負わされる第1順位の者として、直系血族(例 親と子)及び兄弟姉妹が規定されています。その扶養義務の程度は自分の生活水準と同じ水準の扶養を行う義務があるといわれております。次に、第2順位の者として、3親等内の親族について、特別の事情がある場合には、家庭裁判所の審判に基づき負わされるものとされております。そして、その扶養義務の程度は、扶養義務者に余力がある限りで扶養を行う義務があるといわれております。
ここで、夫の姑に対する扶養義務は、第2順位の扶養義務のことです、
ただし、判例において、上記の「特別の事情」は、特に厳格に解釈されており、例えば、3親等内の親族から以前に扶養義務を負わされることが相当とされる経済的な恩恵を受けていた場合であったり、同居している場合などがこれに当たるといわれております。
4 氏の変更
ところで、夫が死亡したのち、姻族関係の終了届を提出する場合には、同時に復氏(婚姻前の氏にもどすこと)したいと考える人が多いようです。
その場合には、姻族関係終了届の提出とともに、復氏届も提出することを忘れずにしてください。
5 相続・遺族年金の関係
姻族関係終了届出の提出によって、夫の妻に対する相続権及び遺族年金の受給権が消滅したりするのでしょうか。
答えは、姻族関係終了届の提出によって相続権及び遺族年金の受給権が消滅することはありません。相続権や遺族年金の受給権はあくまでも相続開始時(夫の死亡時)の婚姻関係に基づくものであり、姻族関係終了は、夫の死亡後に生じたもので、別次元の問題だからです。